2022年度「学問への扉」学生調査の結果の概要
【調査目的】
「学問への扉」のさらなる質の向上をめざし、実施した授業の実態についての学生の意識、満足度や能力向上の実感を把握すること、それらの年次比較を行うことを目的として、毎年度同一項目の質問紙調査を行っています。
【調査時期・方法】
受講する学生(おもに1年生)3,375名を対象とした質問紙調査を2022年7月25日から9月30日までを回答期間としてオンラインで実施しました。
なお、今回から「入学時アンケート」等、他の学内アンケートと照合するため、従来の大阪大学教育支援システムKOANによる回収方法ではなく、大阪大学SLiCSセンターのWebアンケートシステムを用いました(回答者数:1,463名、回答率43.3%)。
昨年度までに比べ回答率が低い点に留意する必要がありますが、その原因はKOANより学生の知名度が低いシステムに変更したためと推測しています。この点については来年度以降の対応を検討中です。
【調査結果のポイント】
※回答率の低下により、回答がより意欲的な層の学生に偏った可能性もある。
- 授業全体の満足度(5件法)は平均4.36で、2019年度4.09、2020年度4.37、2021年度4.39であったことから、高い水準を保っている。
- 授業内容に対する意識および能力向上の実感についても、全般的に傾向は例年どおりであり数値では昨年度の結果を上回ったものが多かった。
- 特に、意識については、「学生同士のコミュニケーションは十分にできた」(昨年度+0.22ポイント)「他学部の学生と交流をもてた」(昨年度+0.20ポイント)での上昇が目立った。
- 能力については、コミュニケーション能力(昨年度+0.15ポイント)や、文化的、国際的な多様性を正しく認識する能力(昨年度+0.14ポイント)、問題を発見することができる能力(昨年度+0.13ポイント)での向上が目立った。
【各項目の概要】
(設問1)当初希望したクラスを選んだ理由(当初抱いていた期待)について、あてはまるものを全て選んでください
(設問3)実際に今のクラスを受講して(当初の期待に対して)満足度はどのようなものですか?(5件法)
満足度平均4.36(2021年度4.39、 2020年度 4.37、 2019年度 4.09)
(設問4)研究の面白さを感じられた(6件法)
平均4.90(2022年度4.91、2020年度 4.89、2019年度 4.58)
(設問5)教員は授業(宿題、課題を含む)にどのような教育方法を取り入れていましたか?
(設問8)教員から、取り入れた教育方法について十分に説明があった(6件法)
平均4.87(2021年度4.89、2020年度 4.92、2019年度 4.84)
(設問9)教員は、学生の発言を促すように支援していた( 6件法)
平均5.07(2021年度5.04、2020年度 4.81、2019年度 4.99)
(設問10)教員は、学生の興味や関心を引き出すように試みていた(6件法)
平均5.12(2021年度5.13、2020年度 5.12、2019年度 4.89)
(設問11~18)「学問への扉」の効果についての学生の意識(6件法)
(設問19~29)学生の能力向上の実感(6件法)
【自由記述における学生の声(一部抜粋)】
「文系である私が、理系の学問に触れることができた点がよかった。理系の学問とはいえ、生活に身近な話題も多くあったため興味を持ちやすかった。」(外国語学部1年)
「小学生の頃に戻った時のように頭を柔らかくして使ったので楽しかった」(工学部1年)
「同じ学問でも学部によって切り口が全く異なるということ、学術論文の探し方、研究発表のイメージなどを学んだ」(基礎工学部1年)
「プレゼンテーションの回数が多く、力をつけることが出来たと思う。自信も着いた。」(法学部1年)
「当初は自分の専攻分野に関する講義を希望していましたが、実際には全く違う講義を受講しました。日頃触れない学問分野を学べて楽しかったし、この授業以外では関わることのない他学部の人たちと交流できてとても良かったです。」(外国語学部1年)
「専門分野に囚われず自分の興味を持った学問に挑戦することができ、その上、専門科目とは違う能力を得ることができるとても良い機会だった。」(歯学部1年)
「他学部の同級生と交流し、異なった視点から物事を考察できるようになった。」(医学部1年)
【今後の課題】
回答数が例年よりもほぼ半減している点に注意する必要がありますが、概ね例年どおりの傾向で高い水準を保っている項目が多かったです。
特に学生同士での交流やコミュニケーションの効果については、2021年に引き続き高い水準であり、自由記述回答からも学生にとって大きなモチベーションや学びのきっかけになっていることが読み取れます。
他方で、阪大生の課題といえる、「文化的、国際的な多様性を正しく認識する能力」と「リーダーシップ能力」については依然として他の項目よりも低い数値となっています。
前者については、クラスによってはグローバルな現象や異文化を扱う場合や受講生のなかに日本以外のルーツを有する学生がいる場合もあるでしょう。そのため、まだ一部ではありますが、学生の自由記述でも異文化への視点について言及があったり、数値上も上昇がみられたりと、若干の改善の兆しもあります。
しかし、後者のリーダーシップについては、あまり大きな変化がみられず、特に重点的な対応が求められていることがわかりました。
この背景や要因について、「入学時アンケート」などの他のデータも参考にしながら、より詳細な調査・分析を行いつつ、FDなどでも重点課題として問題提起していく所存です。