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  • 薬学
  • 2019年度

脳と心に効く薬

担当教員:田熊 一敞先生、中澤 敬信先生(歯学研究科)

担当教員の狙い

  • 高校と大学での学びの違いを知ってほしい
  • 面白いと思ったことに自ら興味を持ってほしい

ここがオモロイ!!

  • 学生が興味を持つ内容の選定!

  • 複数教員で担当する授業のデザイン!

コースデザインと学びのプロセス

1 薬理学序論
2

脳と神経

3 神経伝達物質
4 受容体と生体内情報伝達
5 イオンチャネルとトランスポーター
6

統合失調症 (1)

7

統合失調症 (2)

8

うつ病,パニック障害 (1)

9

うつ病,パニック障害 (2)

10

外傷後ストレス障害 (PTSD) と摂食障害

11 不安障害,睡眠障害,てんかん (1)
12 不安障害,睡眠障害,てんかん (2)
13

認知症 (1)

14 認知症 (2)
15

耐性と依存


1〜7回目:中澤先生担当、8〜15回目:田熊先生担当

複数教員で担当する授業(コラム)

様々な学問的背景を持つ複数教員で担当する授業は、物事を多角的に見ることや、高次の思考を促すために有効的であると言われています。
しかし一方で、1つの授業科目として適切に授業設計されない場合は、学生が習得する知識が断片的になったり、知識同士の統合が上手くいかず、混乱をきたしたりする恐れがあります。
そのようなことを防ぐためにも、複数教員で担当する際には、事前に学習目標や授業内容及び方法、また、課題や評価の基準を十分に議論した上でシラバスを作成し、それぞれの担当回同士の接続をどのようにするのかを熟考する必要があります。
また、授業期間中には、それぞれ数回見学をしたり、ミーティングをしたりして、互いの授業や学生の様子を深く共有することが重要です。

授業の概要

「くすり」とは、病気の診断や治癒、症状緩和、治療、予防の目的で使用する物質と定義されており、くすりによる効果はこれら物質 (薬物) と生体の相互作用の結果によって起こる応答により評価されます。
本授業では、精神・神経系領域の病気を題材として、くすりが効くメカニズムを分かりやすく説明し、病態の成因や症状緩和に関わる生体反応を分子レベルで理解することを目的とします。
受講終了時には、異なるバックグラウンドを持つ学生が全て、病気や障害 (特に精神・神経系領域に関わるもの) の成因を分子レベルで考える視点を持ち、くすりが効くメカニズムを生体内情報伝達など科学的視点から説明できることを目標としています。

学生が興味を持つ内容の選定!

本授業では、疾患と治療薬の仕組みを併せて理解することを通して、高校までの学びとは異なる自発的な学び方を習得するという目標のもと、どの学部の学生でも興味を持って学習に取り組めるような、内容の選定と教える順番の工夫がなされています。
専門性の高い授業内容ではありますが、疾患の内容について基礎的な説明をすることに加えて、人間の努力と工夫(これまでの研究成果)でどのような治療や治療薬が開発されてきているのか、さらにそれでも現在の人間では操作できない部分は何か、という観点で授業が展開されます。
どの学部の学生でも興味が持てるように、単に知識を教授するだけではなく、社会の中での位置づけを説明することを意識されています。
また、授業見学時に「みなさんは医療従事者にならないとしても医療の将来を考えることは重要」とおっしゃっていたことはとても印象的です。
このように授業の中で、内容を学ぶ意義を学生に伝えることは重要です。内容の選定の際には、レベルを調整することも重要です。
専門的知識を有していない1年生に教えるために、先生は学生の様子を注意深く見て、できるだけ専門用語を優しい言葉に言い換えることを意識されています。
これは普段、社会貢献活動として一般向けに実施している公開講座の経験等が活きているとお話下さいました。

さらに本授業では、疾患や治療薬の内容を教えるだけではなく、先生の自己紹介の時間を確保されています。
そこでは先生がなぜ研究に興味を持ったのか、また興味を持った際に、どのような学生生活を送ったのかをお話することを通して、研究者とは何かを伝えておられます。
このように授業の中で、1年生に研究者の一端を見せることで、学問のおもしろさを伝え、学生の興味を喚起させることができます。

複数教員で担当する授業のデザイン!

本授業は、教員が2名体制で授業をされています。
複数教員で担当する場合、教員同士が授業に関して情報共有を密に行う必要があります。本授業では2人体制で行う際、事前にコース全体の構成や、課題について十分に議論をされています。以下の表には、授業の内容を示しています。
全体として学生が「疾患治療の薬の役割について学ぶ」という目標に基づいて、【疾患の説明→治療薬】の順番でそれぞれの内容を展開されています。
その際、専門的な内容を詳細に扱うというよりは、内容を少し端折ってでも学生が興味を持つようなことを扱うことを担当の先生同士で合意形成しておられます。
また課題については、各先生が担当された部分において、それぞれ共通して「興味を持った疾患についてより深く調べる」ということを課しておられます。
授業後には、授業改善のためのアンケートを教員同士で共有して、一緒に改善を重ねることも予定されています。