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  • 2019年度

対称性の数学入門

担当教員:原 靖浩先生(理学研究科)

担当教員の狙い

  • 数学の内容を1つだけでも学んでほしい
  • 内容を詳細に学ぶより、自ら考える経験をしてほしい

ここがオモロイ!!

  • 探究的学習のための方法!

  • 多様な学部の学生を授業に巻き込む方法!

コースデザインと学びのプロセス

学びのプロセスと教授法  授業外学習
オリエンテーション    
1

講義

議論

身の回りの『対称性』を探す

2

講義

議論

 

3 グループ演習

テキスト講読

4 グループ演習  
5 描画演習

描画演習

6 描画演習  
7 講義 プロジェクトの取り組み

プロジェクトの取り組み

8 講義 プロジェクトの取り組み

プロジェクトの取り組み

9 講義 プロジェクトの取り組み

プロジェクトの取り組み

10 プロジェクトの取り組み 進捗報告

プロジェクトの取り組み

11 中間発表会  
12 プロジェクトの取り組み

プロジェクトの取り組み

13 プロジェクトの取り組み

プロジェクトの取り組み

14

最終発表会

リフレクション

 

授業の概要(シラバスより一部引用)

日常の中にある対称性を数学的に捉え、それを分類することから始め、それらの対称性の中にある数学的な性質を理解します。
具体的には、対称性の理論を学びながら、グループ学習を通して、自分自身で問いをたてて個人プロジェクトを遂行する形で展開されます。

探究的学習のための方法!

本授業は、数学の対称性をテーマにした授業で、教科書で理論を学びながら、同時に自らテーマを設定し、他者との議論を交えて個人プロジェクトを完成させる形で展開されています。
具体的には、理論を学んだ上で、自ら問いをたて、方法を考え、その結果をプレゼンテーションと作品によって発表する流れで、研究の一連の流れを体験できるデザインになっています。
とはいえ、受講生は1年生なので、そのプロセスを最初から理解しているわけではありません。
実際に、身近な事例から始めるために、「身の回りにある『対称性』を見つけてきてください」という課題を出しても最初は、ありきたりな事例が多く、小中学校の発想から抜け出すのが難しかったようです。
そういう状況下では、先生も、つい教えたくなっていたそうです。
ですが、「自ら考える」ことを、この授業の目標の1つとして掲げていることからも、教科書を導入することによって、そこからヒントを見つけて問いをたて、グループのメンバーや先生からのフィードバックを何度も受けてブラッシュアップする状況が作られています。
グループの活動では、具体的に、発表→フィードバック→ふりかえり→次の方針をたてるという循環を創り出して、プロジェクトを進められています。
なかでも評価やふりかえりの活動は、改善点を見出すことが目的ですが、ルーブリックを用いて評価を行うことで、改善点を明確にする工夫がなされています。
また、発表や議論が続くと、話が脱線してしまうことがありますが、時間を計ってテンポよく実施することで、集中力を切らさないようにされています。
さらに、プロジェクトの途中で実際の論文を紹介することで、学生が取り組む活動と研究活動の共通点の一端を見せたり、数学の論文の特徴について述べたりすることで、分野への理解を深める工夫をなされています

多様な学部の学生を授業に巻き込む方法!

この授業では、様々な学部の学生が受講しており、背景知識もばらばらという状況でしたが、教員やグループのメンバーと議論しながら、個人プロジェクトを進める中でそれぞれが興味を持って取り組める工夫が散りばめられています。

まずは、特定の知識がなくても遂行できるという雰囲気を授業の序盤で作ることを意識されています。
対称性について、身近な事例を考えたり、絵(図)を描く課題に取り組むなどして、苦手意識を持たせないような工夫がなされています。
また、取り組んだ内容についてグループ内で議論を重ねることによって、個人プロジェクトを方向づけられています。
学生は、一人では行き詰まるところを、他のメンバーや教員と一緒に学ぶことで励ましが得られ、改善の方策が見出されるようです。
建設的な意見を重ねつつ、できるだけ多くのメンバーの意見が聞けるように、前半と後半で1回グループのメンバーを変えたようです。
教員からのアドバイスは、プロジェクトを進める上でもちろん重要なのですが、様々な背景の学生がいることを踏まえて、先生はできるだけ前向きになれるような言葉がけを行い、プレッシャーにならないように心がけていたそうです。
発表の形式についても多様性を認めておられます。
最終的にレポートを提出するという課題は全員共通ですが、授業内での表現方法ついては、テキスト、動画、作品、プレゼンテーションと各学生が自分の得意な形式で発表することが求められています。
実際、見学に伺った際も、動画を用意してくる学生や、レジュメを作成してくる学生、また紙を用いた工作を持参してくる学生も見られました。

このように、専門性が高い授業であっても、全員が興味を持てるような身近な話題から始めること、「できる」という雰囲気づくりをすること、相互に助け合う仕組みや教員や他の学生からの励ましを受ける仕組みを取り入れること、またアウトプットの形態を自由にすることで、様々な学部の学生に対応することができます。