2024.05.01
ご報告

【イベント報告】「学問への扉」高大接続シンポジウムが開催されました(2024/03/26)

開催概要

  • 日時:2024年3月26日(火)13:30~17:00
  • 場所:大阪大学豊中キャンパス DAICEL Studio
  • 形式:対面+オンライン同時配信

 今年度は「学問への扉」での成果や課題をテーマの中心としつつ、教育のあり方やユニークな取り組みを「高大接続」というより広い関心のなかで考えるシンポジウムを開催しました。当日は、会場32名、オンライン55名の合計87名が参加しました。

 浅野建一 全学教育推進機構副機構長の挨拶にはじまり、大学における教養教育や高校の探究学習など、さまざまな教育活動に助成を行っており、大阪大学も助成いただいている一般財団法人三菱みらい育成財団の妹背正雄 常務理事からも激励の挨拶をいただきました。まず、第1部では1時間ほど大阪大学の高大接続・全学教育に関する取り組みの紹介が行われました。

第1部 大阪大学の高大接続・全学教育に関する取り組みの紹介

 最初に村上正行 全学教育推進機構教授より、大学での学びの第一歩を促す教育科目である「学問への扉」の概要やデータからみる5年間の経過、授業実践例が紹介されました。これらの内容の一部については、本ホームページの「授業紹介」「成果発表」「公開情報」からご覧いただけます。

 次いで、大阪大学のユニークな取り組みとして、高校生を対象とした「大阪大学SEEDSプログラム」について、阪口篤志 スチューデント・ライフサイクルサポートセンター高大接続部部長より報告がありました。SEEDSプログラムは、高校生が大阪大学のサポートのもとで研究や国際交流を経験する機会を提供するものです。高校と大学の間に学びのギャップがあるなかで、どのような活動が行われているのか、プログラムの制度と具体例から説明いただきました。

 2024年度より新設の学部教育プログラム「OU-SDGsプログラム」についても、プログラムの概要を坂口愛沙 全学教育推進機構助教より、プログラムの必修科目であり2023年度から先駆けて開講している「阪大SDGs学入門」の授業の内容等を藤井翔太 社会ソリューションイニシアティブ准教授より報告がありました。SDGsについて学ぶ機会の多い高校生が増えてきているなかで、本プログラムは大学においてもSDGsに関連する授業を体系的に提供するために設置されます。「学問への扉」は新入生の必修科目であるため本プログラムの構成科目ではありませんが、「学問への扉」の各授業とSDGsの関連をまとめた資料などが紹介されました。

第2部 高校における探究活動の取り組み紹介

 第2部では、高校の探究活動における取り組みについて、大阪府立豊中高等学校、熊本県立熊本高等学校、宮城県仙台二華高等学校の3校に報告いただきました。3校はいずれも三菱みらい育成財団の助成先(カテゴリー1)に選ばれており、全国的にもユニークな取り組みをされています。

 大阪大学豊中キャンパスから距離が近く、大阪大学への進学者も多い豊中高校からは、志方洋介 主席に登壇いただき、生徒も教員も心を響かせるという意味の「響学」をキーワードとした探究学習プログラムについて、報告いただきました。プロジェクトの概要のほか、研究の「型」を学ぶ授業デザイン、探究活動において課題となりやすい教員側の工夫や評価方法に関しても具体的にお話しいただきました。

 STEAM教育で独創性が光る熊本高校からは早野仁朗 教諭に登壇いただき、VRを中心としたクロスリアリティ(XR:現実と仮想空間をつなぐ技術)と呼ばれるデジタル技術を活用した取り組みについて、報告いただきました。「ワクワク」を大切に生徒の関心やアイデアを活かしながら、XRを駆使して地域活性化などの課題解決に取り組む事例を紹介いただきました。

 国際協力や社会課題への取り組みについて、独自の実績を蓄積されている仙台二華高校からは、地主修 教諭に登壇いただき、とくにカンボジアのメコン川流域での活動を報告いただきました。一般的な国際交流の域を超え、生徒が主体的に現地でのニーズ把握からバイオトイレの開発などを行う事例から、フィールド・ワークを通じたグローバル・リーダーの育成について紹介いただきました。

第3部 パネルディスカッション

 その後行われた第1部・第2部の登壇者によるパネルディスカッションでは、フロアーからの質問に答える形で議論が展開されました。各取り組みへの質疑応答のほか、教員間の連携や学外の専門家などとのネットワークの築き方、成績評価の方法、学びを深める「問い」の立て方など、生徒・学生の主体的な学びを実現するうえで欠かせないポイントについて、意見が交わされました。

 高校と大学で場の違いはあっても、生徒・学生の興味関心や熱意をいかに引き出し、形にしていくのかという点で考えが重なる部分も多く、短時間ながら熱い議論となりました。

まとめ

 閉会に際して、進藤修一 全学教育推進機構機構長から、三菱みらい育成財団をはじめご支援いただいている方々・関係者への御礼と、高校・大学の教育関係者が一堂に会する貴重な場となったことが述べられ、盛会のうちに終了いたしました。

 閉会後は情報交換会が行われ、各登壇者からの発表についてディスカッションを重ねたり、所属や地域を超えて新たなネットワークが築かれたりと、今後に向けて交流が深められました。

 事後アンケートでは、大阪大学・他大学の関係者、高等学校の関係者、企業関係者、保護者など幅広い参加者の方から、高い満足感を示す回答をいただきました。「教員の意識のすり合わせや評価という、興味深い論点を取り上げていただき、勉強になった」「具体的な事例から高大接続のあり方について理解を深められる良い機会となった」などの声をいただきました。

 また、同じテーマや論点であっても、教員だけでなく生徒や学生から見た各取り組みの意味や、今後さまざまな特色の異なる高校や大学でどのように活用していけるかといった観点からも掘り下げてほしいというご意見もいただきました。今回いただいたご意見等をもとに、今後も高校での探究学習と大学での初年次教育を接続させながら、「心のエンジンを駆動する」よりよい学びの実現に注力してまいります。

 改めまして、ご登壇・ご参加くださった皆様、三菱みらい育成財団をはじめ日頃より「学問への扉」に関してご支援くださっている皆様に心より御礼申し上げます。

参考:事後アンケートの結果概要

  • 質問項目:回答者ご職業、第1部満足度、第2部満足度、第3部満足度、全体満足度、自由記述
    ※満足度は「満足した」「やや満足した」「どちらともいえない」「やや不満」「不満」「聴講していない」
  • 回答期間:2024/3/26~2024/3/31
  • 回答方法:Google Forms
  • 回答数(登壇者・スタッフ除く):43名(回収率49.4%)